校長先生からの挑戦状!〜「学級会の進め方」総まとめ〜

(2023.10)

【小学校先生たちの特活お助け玉手箱 連載6回目】

登場人物紹介

校長先生

特別活動のことなら、
なんでも来い!
知る人ぞ知る、伝説の特別活動名人。

ユメ先生

憧れの小学校教諭になったばかり。
元気とやる気でいっぱいの新人先生。

「子供が話しに来たんです」

校長先生!
聞いてくださいっ!!

お、ユメ先生。張り切っていますね!
何かいいことでもありましたか?

はい!
実は、子供が話しに来たんです。
「先生、○○さんが転校するなら、
みんなでお別れ会をしたらどうですか。」って。

おお、なるほど。
子供からの提案は嬉しいですね。

そうなんです!
それで・・・

校長先生からの挑戦状!

では、ここで問題です!

あなたがユメ先生だったら、この子供の意見をどのように取り上げますか?

取り上げ方にはいくつかの方法が考えられます。

たとえば、

  1. 時間や場所、何をするかについての計画を先生が立て、先生の司会進行の下で、子供たちに「お別れの会」をさせる。

  2. 先生が決めなければならないことと、子供たちが決めることとを分けて、後者については、子供たちが話し合って決める。みんなで決めたことを分担し、準備をし、「お別れの会」を子供たちの司会進行で実施する。

  3. 「お別れの会」を実施するために、その計画などをする子供たちを募り、子供に任せて「お別れ会」を行わせる。


あなたがこの子供の担任だったら、どの方法を選択し、子供に対してどのように助言しますか?
また、それはどうしてでしょうか?

「学級会としてはどうか?」という視点から考えてみてください。

解説

それでは、解説です。

「学級会」としては、2の方法が適切であると考えられます。

また、子供に対する助言としては、次のようなものが考えられると思います。

「○○さんのお別れ会ですね。学級会の議題として出してみたらどうですか。
〇〇さんのお別れ会をどうして行いたいのかという理由も伝えられるようにしておくといいですね」

子供たちが、自らの学級生活から「みんなでしてみたいこと」「みんなで決めておきたいこと」「みんなで作り上げたもの」などの問題に気付き、その問題から自分たちで解決できる問題を選び、学級会の議題とし、みんなで話し合い、その問題のよりよい解決方法を決め、自分たちで分担した役割ごとの計画、準備のもと、みんなで実践し、その実践を振り返る学習過程がある学びが「学級会」です。

そして、大前提として大切なことは、学級会が時間割に位置付けられている授業であるという点です。
授業ですから、担任の適切な指導の下での活動でなくてはなりません。
つまり、担任の指図に従って活動するものでも、子供に丸投げする活動でも、ないのです。

以上のことから、「学級会」としては、2の方法が適切であると考えられるのです。

学級会は「事前の活動」「本時の活動」「事後の活動」という一連の活動で成り立っている

学級会は、子供が生活問題を見出し、自分たちで解決、実践できる内容を議題として選定し、みんなで話合い、自分にとってもみんなにとってもよりよい解決方法を決め、実践し、実践したことを振り返り、新たな課題の解決に向かう活動であり、学びです。

ですから、学級会は話合いだけで成り立ちません。
学級会を計画、準備するなどの「事前の活動」、計画に沿って話し合う「本時の活動」、そして、話し合ってみんなで決めたことを実践するために、役割分担に基づいて準備や活動を進め、実践し、振り返るという「事後の活動」という一連の活動から成り立っています。

(文部科学省「小学校学習指導要領解説 特別活動編」より)

【事前の活動】

上記の子供の気付きが議題として選定されれば、この問題を見出した子供を提案者とし、司会グループと共に、〇〇さんのお別れ会をなぜしたいのかという理由についてより明確にしていく計画委員会が行われます。
さらに、計画委員会では、提案理由の内容をもとに、何について話し合うのか、話合いの柱を決めていきます。

計画委員会は、話し合って計画したことを、「学級会ノート(別の名称もあると思います)」に記載し、学級全体に配布して、内容の説明を行います。
学級の全員が、それぞれに疑問や不明確な点を明瞭にして、自分の考えがもてるようにし、この議題を自分のこととしてとらえる意識を高めるためです。
話合いへの参画を高めるための工夫として、意見のある子供が事前に短冊に書き出し、学級会コーナーに提案理由などとともに掲示する方法も考えられます。

【本時の活動】

本時の話合いの冒頭では、司会グループによる挨拶、司会グループの紹介や一人一人の役割に対するめあての話、議題と提案理由の確認、今日話し合うこと、そして、先生からの話が行われます。
先生からの話で伝える内容は、決まっていることの確認や、今日の話合いへの期待などが考えられます。今回のケースであれば、「お別れ会をする日時は」「場所は」「準備をする時間は」「〇〇さんの思い出に残る会にしたいということを大切に考えてほしい」といった話が適切です。

そして、話合いに入ります。
話合いの柱1から、「意見を出し合い」「出された意見を比べて、提案理由の内容に近付く意見を積み重ね」「よりよい解決方法を決めていく」という過程を踏んで進めていきます。
もちろん、担任の適切な指導、助言のもとでの学級会ですから、不明瞭なことや話合いが混乱している状況などに対しては、担任が指導助言をします。
その際の言葉がけは、例えば、「今は、・・・について話し合っていますね」「この意見とこの意見を比べるのはどうですか」「今の意見は、この案をよりよくする内容かな」などが適切で、子供たちが気付いたり、選択できたりする指導助言となります。

学級会の終末では、司会グループが決まったことを発表するだけでなく、振り返りの時間を取るようにします。
これは、子供たちがそれぞれに自分の学びを振り返ることで、次の学級会の話合いへの目標をもてるようにするためです。
今日の学級会で自分がどうであったかを、項目や記述で振り返るようにすると良いでしょう。振り返りの内容を発表する時間をとる学級もあります。
終末の助言として、先生からも、「司会グループへの労い」「今日の学級会での成長点」「次の学級会への課題」「実践への期待」などの話をします。

最後は、司会グループの挨拶で終わります。
本時の話合いを確実に事後の活動へつなげるため、決まったことを学級会コーナーへ掲示するといった工夫も考えられます。

【事後の活動】

学級会で話し合ったことを実践するため、役割分担による計画・準備が始まったら、学級全体で活動の進捗状況を共有する時間をとることが大事です。
それぞれの役割がみんなで決めたことに向かっているという確認のほか、課題がある時にアイデアを出し合う場にもなります。また、提案理由の内容を再度意識し、実践に向けた気持ちを高めていく時間にもなります。

いよいよ実践の日、司会を担う子供は、〇〇さんのお別れ会をすることと、何のためにするのかを確認しながら司会をします。
司会以外の子供たちも、分担された役割を、他の役割の子供と関わりながら遂行し、会を進めていきます。

学級会は、一連の活動が次の一連の活動へつながっていく


実践後の振り返りでは、うまくいったことも、うまくいかなかったことも出てきます。
これらは、実践をしたことで明らかになったことであり、経験を通して見出された課題として捉えられます。経験から見出されている課題ですから、子供たちにとって、自分のこと・自分たちのこととして、より深く受け止めることができるものとなっています。

うまくいったことを更によくするには。
うまくいかなかったことは、どのようにしたらうまくいくか。
どちらも次の課題となります。
学級会は、「事前の活動」「本時の活動」「事後の活動」という一連の活動だけで完結させるのではなく、その一連の活動を、さらに次の一連の活動へとつなげることで、学びを深めていくことができるのです。

このことは、担任が理解しているだけでなく、子供たちにも自覚できるようにすることが大事です。

ですから、学級会ノートは、話合いの計画と実践後の振り返りを一面とし、一連の活動の中で実践後の振り返りができるようにすることが肝要です。そして、ポートフォリオとして、学級会ノートを蓄積し、長いスパンの中での見直しを通して自己の成長や課題を自覚する教材とすることも必要です。

〜本連載について〜

日本式の学校教育が世界から注目される特長に、全人的な教育を行うことがあると言われます。
特に、その象徴的な役割を担っているのが「特別活動」です。
学習指導要領によれば、特別活動は「様々な構成の集団から学校生活を捉え、課題の発見や解決を行い、よりよい集団や学校生活を目指して様々に行われる活動の総体である」とされており、「なすことによって学ぶ」ことを方法原理としながら、各学校で特色ある取組が進められています。
また、複雑で変化の激しい社会の中で求められる能力を育成するという視点からも、特別活動に期待される役割は、今後ますます大きくなっていくと予想されます。特別活動で育成を目指す資質・能力の重要な要素であり、学習過程においても重要な意味をもつ3つの視点である「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」は、各教科等で育成する資質・能力とも様々に関わっており、実際の社会で生きて働く汎用性もあるからです。

そんな特別活動の授業名人になれるヒミツをお伝えするのが、本連載です!

名付けて「小学校先生たちの特活お助け玉手箱」。
一般財団法人 総合初等教育研究所 室長で、元・全国特別活動研究会 会長の、福田 俊彦 先生の監修でお届けしています。

特活お助け玉手箱
「学級会の進め方がわかりません」バックナンバー

1 学級会の進め方
2 学級会の議題を、どうやって見つけるか?
3 学級会が終わらない?折り合いつつ合意形成に向かう話合い
4 合意形成する話合いの方法は?
5 実践の段階に効果的な支援とは?

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