「活用する力」を測るテストが生まれるまで

(2021.3)

「活用する力」を測るテストが生まれるまで

かつて、ペーパーテストと言ったら「暗記した正解を書くもの」というイメージの強いものでした。
そんな風潮の中で、最初に「活用する力」を測るテストを生み出したというのは、どんな経緯からだったのでしょうか?

「授業の流れに沿ったテストは、つくれませんか?」
ある先生からそんなご相談をいただいたのは、かれこれ20年近く前のことです。生きる力を重視する学習観への転換が始まったばかりの頃でした。
理科の研究をされていたその先生は、こう言われました。
「授業というのは、課題解決の流れそのものなんです。学習課題をどう解決するか。子供たちは課題を見出し、友達と対話しながら試行錯誤して学びを深め、課題を解決していきます。」
「でも、大事なのはどう解決したかという結論を覚えることではありません。現象の中に課題を発見し、発見した課題を解決できる<思考の仕方(すべ)>、つまり活用する力を身につけること。これこそが、子供たちに育みたい力なんですよ」
「ところが、観点別のテストはあっても、本当の意味で課題解決の思考を見取れるテストがないんです。夢中で学んで、折角<思考の仕方(すべ)>を身に付けても、それが評価されないのでは、子供たちの学びに向かおうとする力が育ちませんよね。これ、何とかなりませんか……?」
こうして生まれたテストに、私たちは「Nテスト」という名前をつけました。
由来はシンプルで、まったく新しいスタイルのテストだからです。「New」の頭文字をとって「Nテスト」としたのです。

なるほど、その先生との、そんな対話から「活用する力を測る」テストが生まれたのですね。
では、最初に発行したとき、現場の反応はいかがでしたか?

従来の設問パターンに慣れていらっしゃる先生方は、思考の流れそのものをテストの中で再現する問題を見てびっくりされることもありました。
しかし、授業で課題解決を体験している子供たちからすれば、「授業でやった通りに解いていけば、できる」テストとなっているので、むしろ取り組みやすいテストなのです。授業で学んだ通りに資料を読み取り、既に身に付けた<思考の仕方(すべ)>を使えば解けるのですから。

暗記した知識をそのまま書くのではなく、身に付けた<思考の仕方(すべ)>を使って解いていくテストというわけですね。
新しい学習指導要領において重視された「ものの見方・考え方」とも通じるもののように思えます。

新しい学習指導要領では「何ができるようになったか」が問われますから、活用する力を見取れるテストは、今後ますます現場のニーズを広げていくと予想されます。
踏み込んだ評価のために、具体的には、活用する力に3つの段階を設ける工夫をしています。
たとえば、単元テストでは「授業の流れを自分の思考として再現できる力」を見取り、学期末には、より横断的な出題で、子供たちの活用する力が汎用的なものに育っているかが測れるようにしています。
さらに、「活用する力を見るワークシート」といった補充資料も用意して、日常生活の中で、「見たことのない問題をその場で考える力」まで見取れるようにしています。

学習評価のツールとしてテストに何を求めるかは先生により違いますから、今後も、従来型のテストへのニーズが消えることはないと思います。
しかし、各社横並びに見える従来型テストにも、違いがあります。煎じ詰めれば、それは、各メーカーが内に抱いたDNAから発するものです。
活用する力を見取れるテストをつくるため、授業と、先生方の熱い思いを見つめ続けてきた20年の蓄積は、当然、基礎基本を重視する「Aテスト」にも息づいています。
「Nがつくれる文溪さんのテストだから」
先生方のそんな言葉を聞くたびに、共に子供たちの成長と教育の未来を目指す者同士であると認め、信頼していただけている嬉しさを感じています。

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