全国学力・学習状況調査が CBTに?!

(2021.4)

 3月22日に行われた「全国的な学力調査に関する専門家会議」では、学力調査を目的に応じて2種類に再編し、児童生徒の学習指導の改善や教育施策の検証に資するための本体調査はCBT化していくよう提案することとなりました。
 更に、30日開催の「全国的な学力調査のCBT化検討ワーキンググループ」では、今年度の試行・検証に関する具体的な検討が行われました。この2つの会議の内容について特集してお届けします。

CBTとは?

 CBTとは「Computer Based Testing」の略で、コンピュータ(タブレット等を含む)を使用して行うテストのことです。TOEICやTOEFLといった資格・検定試験や適性検査等、日本でも150以上の団体で採用されています。
 全国学力・学習状況調査(以下、全国学力テスト)では、2019年4月の中学校の英語「話すこと」調査において、初めて実施されました。
 諸外国では、国際的な学力調査である「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」が2015年から全分野をCBTに移行、「IEA国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」が次回の23年調査より完全移行を予定しているほか、アメリカ、オーストラリア、フランス、オランダ、スウェーデン等で、悉皆または抽出の学力調査をCBTで行っています。

全国学力テストCBT化の議論は?

 全国学力テストのCBT化については、昨年4月に設置された「全国的な学力調査のCBT化ワーキンググループ」において、専門的な話合いが行われています。 
 この背景には、2018年3月に発表された「全国的な学力調査の今後の改善方針について(まとめ)」の中で、調査方法の不断の見直しのため、中長期的に検討すべき課題として「CBT導入」が挙げられたこと、教育再生実行会議や自民党教育再生実行本部の特命チームより、CBT活用を前提として学力テストの在り方を見直す提言が行われていることなどがあります。

CBT化のメリットは・・・

 動画等、CBTの特性を生かして児童生徒の意欲をより引き出すような出題や、多様な特性を有する児童生徒に対応した出題・解答方式が可能です。
 解答に加えてログを把握できるため、児童生徒のつまづきの把握等、多角的な分析による指導改善面も期待できます。さらに、項目反応理論(IRT)を導入して複数の問題を用意すれば、年度間の比較が可能となります。
 印刷コストの低減、準備期間の短縮や、一連の工程の効率化も、大きなメリットです。

CBT化の課題は・・

 全国一斉でオンラインでCBT化した場合、サーバの負担がかなり大きなものになることが危惧されています。
 また、児童生徒や教師がICT機器を使用した学習やパソコン操作に慣れていることが必要となります。

学力調査を2つの目的に整理!

 3月22日に開催された「全国的な学力調査に関する専門家会議」では、全国学力・学習状況調査を目的と役割により再編成し、

 ①学力の経年分析を目的とする調査
 ②学習指導の改善や、地方の教育施策の検証に活用するための調査

の2本柱に整理する提案が出されました。

 提案によれば、②は従来通り悉皆調査として現行の本体調査を基にCBT化する一方、①に関しては、3年に一度程度の抽出調査で足りるとしています。

今年10~11月に1万人規模で試行・検証!

 今年10〜11月には、「全国的な学力調査のCBT化ワーキンググループ」でまとめられた「論点整理」に基づいて、約1万人の児童生徒を対象とした試行・検証が予定されています。

 同時に、国立教育政策研究所ではデータサイエンスセンターを設置し、CBTの問題開発や測定・評価に関する調査研究、IRTに対応できる問題バンクの開発等を開始することとなっています。

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