授業改善と『標準授業時数』の関係は
(2020.2)
学校現場では標準授業時数を大幅に超えた授業計画が組まれている実態があり、働き方改革の面から課題とされています。今年全面実施となる新しい学習指導要領では、外国語科やプログラミング教育など新しい内容も増えたことから、さらに長時間化するのではないかといった声もあります。
そんな中、中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会において、標準授業時数の在り方についての検討が始まりました。これは、昨年12月に発表された「新しい時代の初等中等教育の在り方 論点取りまとめ」の中で、先端技術の活用等を踏まえ、学年を超えた学びの在り方や標準的な授業時間等の在り方について早急に検討すべきであるとの指摘に応じたものです。先行研究から、先端技術を活用した「個別に最適化」した学びにより、授業時間を大幅に効率化できる可能性が示唆されたことが背景にあります。
そこで、今号では、初回の検討の様子をレポートします。
標準授業時数に関する論点は・・?
昨年12月に発表された「新しい時代の初等中等教育の在り方 論点取りまとめ」によれば、授業時数に関する論点は「これからの学びを支えるICTや先端技術の効果的な活用について」の項目にあり、次のような文言で整理されています。
「先端技術の活用等を踏まえた年間授業時数や標準的な授業時間等の在り方や、個別に最適で効果的な学びや支援を進めることによって学年を超えた学びを行うことについてどう考えるか、評価を含めた留意事項について、早急に検討する必要がある。」
学校現場での授業時数の現状は?
ほとんどの公立小学校で、標準授業時数を大きく上回る授業時数が計画・実施されています。
年間総授業時数(全国平均) 【平成29年度】 | (参考)標準授業時数 【平成29年度実績】 | |
小5 | 1040.2単位時間 | 980単位時間 |
平成30年度の調査によれば、全国的に最も多かったのが1016〜1050単位時間を実施している学校(44.1%)で、25.7%の学校で1086単位時間以上を実施していることがわかりました。一方、標準授業時数980単位時間以内であると回答した学校は、全体の6.2%でした。
なお、4月より全面実施となる新しい学習指導要領では、外国語活動、外国語科が新設されたため、5・6年生で70時間、3・4年生では35時間が増えることとなっています。
教育課程部会での話題は・・
討論に先立ち、教育課程部会長の天笠茂/千葉大学特任教授より「標準授業時数の在り方について」と題した発表が行われました。標準授業時数の『標準』という語の解釈が時代に応じ変遷している点を指摘し、「授業時数の在り方を見直すことは、教育課程そのものを見直すことと同じである」と述べました。
また、鹿児島県総合教育センターより「資質・能力の育成につながるICTを活用した効果的・効率的教育活動」の実践報告が行われ、デジタルドリルや遠隔授業の活用で授業が効率化された具体的な事例が発表されました。
議論の中では、ICTの活用により知識・技能の習得にかかる時間や、意見の共有などに要する手続き的な時間が削減できる点への期待と共に、教師のICT指導力を高める必要性に関する意見が多く出されました。授業時数の確保が学力を保証してきた経緯に触れながら、個別最適化された学びの実現と、日本の学校教育が従来大切にしてきた一斉指導や学年主義の良さの存続は、両立する必要があるのではないかといった指摘もありました。