不登校対策の「目指す姿」とは?

(2023.3)

全国の不登校児童生徒が過去最多となっていることが、文部科学省の行った調査により明らかとなりました。
これを受けて、永岡文部科学大臣より「不登校対策の検討にあたっての方向性(目指す姿)」が発表されました。
そこで、今回は、小中学校における不登校の現状と、対策の方向性についてお伝えします。

不登校児童生徒の現状は?

文部科学省の調査によれば、義務教育段階で不登校となっている児童生徒が24万人を超え、過去最多を更新したことがわかりました。
この人数は、10年前と比べると2倍以上となります。

(文部科学省ホームページより)

校種別で見ると、小学校は全体で81,498人と中学校の約半分の人数ですが、小学校だけで比べると、一年前より約2万人も増えていることがわかります。

不登校の要因・背景は?

不登校の要因について、選択式で行われたアンケート調査では、「無気力・不安」を選んだ児童生徒が約半数でした。
ただし、その「無気力、不安」などを生み出したものが何かについてまでは、調査結果からは明らかになっていません。

(文部科学省ホームページより)

また、不登校となり始めたきっかけについて複数回答式で問うアンケート調査において、「学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ」として最も多く挙げられたのは「先生のこと」で、小学校では29.7%の児童が選択していました。
が、他にも、「身体の不調(学校に行こうとすると、お腹が痛くなった。など)」「生活リズムの乱れ」「友達のこと」などを選択した児童生徒もそれぞれ25%以上、さらに、25.5%の児童は「自分でもよくわからない」と回答していました。

(文部科学省ホームページより「不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書」令和3年10月)

上記の調査結果を見ても、不登校となり始めるきっかけは多岐に渡り、単純に測れるものではないことが伺われますが、大きく「学校生活」と「身体の不調・生活リズム」の2つに整理すると、約8割の児童が「学校生活がきっかけ」と回答していることになります。

(文部科学省ホームページより「不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書」令和3年10月)

不登校に、どう対策すればよいのか?

令和5年2月14日に開かれた不登校に関する調査協力研究者会議の席上で、永岡文部科学大臣は、予防的な側面を重視した不登校対策の総合的な政策パッケージを今年度内に策定するよう文科省へ指示したことを説明し、「不登校対策の検討にあたっての方向性(目指す姿)」として、以下の4項目を提示しました。

1.30 万人の不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びを継続する。

2.心の小さな SOS を見逃さず、「チーム学校」で支援する。

3.学校を「みんなが安心して学べる」場所にする。

4.「不登校」を科学的に把握する。

具体的には、教室以外にも登校できる学びの場の確保や、登校できない場合もオンラインで授業につながり、学びを継続できるようにすること。学校を、それぞれの良さを生かした主体的な学びがあり、誰もに活躍できる機会や出番がある安心な場所とすること。また、GIGAスクール構想で一人一台配備されたタブレット端末を活用して児童生徒の心と体の状況を可視化して、サポートが必要な心の不安や生活リズムの変化など、児童生徒の「心の小さなSOS」を早期につかむことのできる仕組みと、それをデータで客観的に把握できる方策を取り入れることなどが示されています。

不登校への取組状況は?

同会議では、不登校への取り組み状況について、全国の教育委員会に聞き取り調査を行った結果の報告も行われました。

それによると、保健室以外の適応指導教室など、校内に通常の教室に入り辛い児童生徒が学ぶための場を整備していると答えた市町村と、学校外の教育支援センター(適応指導教室)を、単独または他市町村との共同設備で整備している市町村は共に7割以上である一方、不登校特例校については、設置もしておらず、設置の検討もしていないと回答した市町村が8割近くに上っています。

(文部科学省ホームページより)

一方、早期発見・未然防止という観点に関しては、8割の市町村から、従来通り教師の観察により行っているという回答が寄せられ、アプリやソフトウェアの活用はまだまだ進んでいないことがわかりました。

(文部科学省ホームページより)

しかし、「アプリ等を用いている」市町村数に「今後活用を検討している」という回答の数を合わせると市町村全体の過半数を超えており、現場の関心は決して低くないことがわかります。

アプリ等の実際の利用例は?

たとえば、GIGAスクール構想を受けて、全国に先駆け令和2年9月までに全ての小中学校にタブレット端末の貸与を開始していた岐阜市では、昨年6月から、全ての市立小中学校、特別支援学校、幼稚園で保護者をつなぐ連絡アプリを活用しています。

保護者からの欠席連絡と学校からのお便り発信をデジタル化して、保護者の利便性向上と教職員の働き方改革を推進しながら、教職員が子供たちとより深く向き合う時間などを確保することをねらう取組ですが、今年1月から、同市が採用している連絡アプリに、子供たちが毎日自分の心と体の状態を入力できるシステムが組み込まれました。

児童は、毎日心と体の状態を入力します。
先生は、座席表一覧で児童の状態を確認し、「心の小さなSOS」の早期発見に役立てることができます。

さらに、このアプリでは、相談したいことのある児童が、話したい先生を選んで気持ちを送信することができるため、チーム学校で「今、ケアが必要な子供」を見逃さず、早い段階で支援につなげられるとしています。

岐阜市のGIGAスクール推進室のまとめによれば、「夏休み中から不眠に悩んでいた」など、これまで把握できなかった児童生徒の心や体の変化を把握して適切なケアにつなげることが、できるようになったとのことです。

▶︎関連リンク

不登校対策の検討にあたっての方向性(目指す姿)
https://www.mext.go.jp/content/20230215-mxt_jidou02-000027614_b.pdf


不登校対策に係る取組状況調査について<令和5年2月13日時点 暫定値>
https://www.mext.go.jp/content/20230215-mxt_jidou02-000027614_7.pdf


不登校に関する基礎資料 令和5年2月14日(2/14調査研究協力者会議第6回 参考資料)https://www.mext.go.jp/content/20230215-mxt_jidou02-000027614_6.pdf

デジタルを活用したこれからの学校について(岐阜市 GIGAスクール推進室)
https://www.city.gifu.lg.jp/res/projects/default_project/_page/001/003/927/2022-6_shiryou1.pdf


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