GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議(第4回)
(2022.5.24)
●本専門家会議は、GIGA スクール構想が進展し、1人1台端末の活用が進む中、学校における働き方改革をより進めるための校務の情報化の在り方や、校務系システムのデータと他のシステムとの連携の可能性等について、今後の方向性を示すことを目的として、令和3年12月に設置されたものです。
・座長には、東北大学大学院情報科学研究科教授、東京学芸大学大学院教育学研究科教授の堀田 龍也 先生が就任されています。
・副座長には、東京学芸大学教育学部教授の高橋 純 先生が就任されています。
・第4回は、委員からの発表、先進自治体の事例発表と、中間まとめに向けた意見交換が行われました。
●藤村委員発表「校務支援システムの変遷・功績とGIGAスクール環境に対応した今後の校務支援システムのあり方」
校務情報化の歴史をひも解くところから、GIGAスクール環境を生かした在り方や実例、今後のさらなる発展に向けての課題提起まで、たいへん内容が濃く、続いて行われた意見交換では活発な議論が交わされました。
○質疑応答・意見交換
- 校務系と学習系のデータ連携に向けての課題は?
- 校務系と学習系が現在分離している学校では、まず中間サーバの準備が必要となるが、これを各自治体ごとに行うのは特に費用の面で効率的でない。共同で使える仕組みづくりなどが必要ではないか。
- 校務系と学習系のデータ連携で考えられるメリットは?
- 健康のデータなど、これまで学習系に乗っていなかったデータも学習状況把握に利用できるようになるなど、より意味のある指導に役立てることができる。
- 自治体での予算確保の際、大規模災害時に学びを止めない=レジリエントスクールという視点を示すことに説得力があった。
- 校務支援システムを入れてもあまり便利にならないという声を聞くことがある。この点に関する調査はあるか?
- 文科省財務課の委託で研究したとき、同じシステムを入れても同じようには使わない、楽になり方がまったく違うことが判明した。使い方の共有が進んで便利になる学校がある一方で、機能があるのに使いこなせず、昔と同じように使おうとして苦労する学校もある。
例えば、便利になったという学校では、会議の際に事前に各自が意見を書き込んでおき、当日は意見が違うところだけ協議するという形に変えた例がある。業務の見直しや知恵の共有と一緒に行う必要がある。
- 文科省財務課の委託で研究したとき、同じシステムを入れても同じようには使わない、楽になり方がまったく違うことが判明した。使い方の共有が進んで便利になる学校がある一方で、機能があるのに使いこなせず、昔と同じように使おうとして苦労する学校もある。
- 同じ市の中でも通知表のフォームが違うなど、カスタマイズができることが標準化を妨げている部分がある。どこまでを標準化し、どこまでをカスタマイズするべきか?
- 統一しても構わないものと、そうでないものの区別が必要。通知表は、データはかえず、レイアウトなど見かけだけ変えるという方法もある。
- 校務支援システムの考え方には、GIGA端末が入ったところでどうするかという発想が必要な面もある。StuDxにてさまざまな事例を紹介しているので、ぜひ活用してほしい。(文部科学省事務局)
- 技術が進んだ今となっては、以前に効率的だった方法を使い続けるとかえって不便になる面がある。管理職や教育委員会のマネジメントが重要。(堀田座長)
●茨城県大子町教育委員会発表「茨城県大子町におけるクラウド型校務支援システムの導入について」
完全クラウド型校務支援システム「BLEND」導入により、学校のBCP対応能力が飛躍的に向上した事例につき、詳しく紹介されました。
特に大きな効果としては、
①職員室に縛られない校務執行体制が構築できるようになり、いちいち職員室に戻らなくとも多くの校務が可能になったこと。
②保護者-学校間の連絡を保護者のスマホアプリ上で行える機能により情報共有がスムーズとなり、教職員・保護者双方の負担軽減につながったこと。
③情報の一元管理・蓄積が可能となったため、転記作業等にかかる教職員の負担が軽減したこと。さらに、蓄積された情報から必要な部分を保護者や児童生徒に開示できるようになったこと。
④ペーパーレス化が促進し、紙やトナー、インク代のかなりの軽減が見込めること。
の4点を挙げられていました。
●GIGAスクール構想の下での校務の情報化に係る論点整理に向けた検討
事務局より「GIGAスクール構想の下での校務の情報化に係る論点整理に向けた検討資料」が資料として示され、解説がありました。
意見交換では、「先生方の負担軽減は大事だが、それだけでは予算が取れないところもあるので、個人情報やコストなどつまづきポイントに寄り添うような提言になるとよい」といった意見や、「現代は、たとえば保護者がスマホ上で児童生徒の様子を見る『デジタル通知表』のようなものも可能な時代。これまでのペーパーベースでは不可能だった、全く新しいものを考える余地があるとよい」など、未来を見通した意見も出されていました。
堀田座長からは、ロードマップを示してほしいというニーズはあるが、技術が進んでいくので、進んだ先の技術をイメージするのが難しいことから、目指すべきグッドプラクティスのようなものを見せていくことが大事であるという指摘がありました。また、学校のICT整備率は、従来「何%が導入済み」といった調査しかしてきていないが、今後は、実際に教員が利便性を感じているかなど、達成度という指標を示していく必要があるとの提言がありました。