教育データの利活用に関する有識者会議(第9回)
(2022.5.31)
●本有識者会議は、児童生徒1人1台端末環境の実現に向けた取組が進められる中、誰一人取り残すことなく、全ての子供たちの力を最大限に引き出すことに資するよう、教育データの効果的な利活用を促進するために必要な方策について具体的な検討を行うため、令和2年6月に設置されました。
○主な検討事項は以下の4点です。
(1)教育データの標準化について
(2)学習履歴(スタディ・ログ)の利活用について
(3)教育ビッグデータの効果的な分析・利活用について
(4)その他
○座長には、堀田 龍也 教授(東北大学大学院情報科学研究科教授)、座長代理には藤村 裕一 教授(鳴門教育大学大学院遠隔教育プログラム推進室長・教授)が就任されています。
●教育データ利活用に関する不安の声があることを受け、今回より、個人情報やプライバシー権に関する有識者が臨時委員として加わることになりました。
○新しく加わった臨時委員は、次の3名の方たちです。
- 石井 夏生利(いしいかおり) 中央大学国際情報学部教授
- 神内 聡 兵庫教育大学大学院准教授・弁護士
- 渡邉 雅之 弁護士法人三宅法律事務所 シニアパートナー弁護士
●今回の議題は以下の3つでした。
(1)教育データの分析・利活用について
(2)教育データ利活用に係る留意点について
(3)その他
議題(1)教育データの分析・利活用について
●教育データの分析・利活用に係る実証事業に関わった3つの自治体、団体から報告があり、意見交換が行われました。
○発表は以下の3件でした。
- 高知県教育委員会
「高知県学習支援プラットフォームの構築とスタディログを活用した個別最適な学びの実現について」 - みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社
「令和3年度オンライン学習システムの全国展開,先端技術・教育データの利活用推進事業(教育データの分析・利活用に係る実証事業)~オンライン学習システムを活用した教育データの分析事業~」 - 株式会社富士通総研
「公教育分野に応用可能な非構造化データ活用事例に関する調査研究の結果報告」
○意見交換では、スタディ・ログとして、問題が解けたかどうかのような知識技能の学習結果が意識されやすいが、子どもが本当にわかっているかどうかを把握するには思考・判断・表現や主体的に学習に取り組む態度など学習プロセスを把握できるようにすることがより重要になるのではという意見や、ICTを活用した教育が進んでいくことで教師の指導観が変わり、必要とされるスタディ・ログも変わっていくのではないかという意見がありました。
また、高知県教育委員会の事例のように学習支援プラットフォームに「学びの足あと」としてのデータが蓄積されて個別最適な学びが可能となれば、テストの存在意義自体が変わり、これまで慣習的に行われてきたテストは不要になるのではないかという議論も出されました。
議題(2)教育データ利活用に係る留意点について
●教育データ利活用に係る留意点として、個人情報やプライバシー保護に関する有識者から発表があり、意見交換が行われました。
○発表は以下の4つでした。
- 個⼈情報保護委員会事務局
「令和3年改正個⼈情報保護法について〜令和5年4⽉の全⾯施⾏に向けて〜」 - 奈良教育大学 教職大学院学長補佐 小崎誠二
「学校の教員からみた個人情報の扱いに関する整理」 - NTTコミュニケーションズ株式会社(学習eポータル「まなびポケット」運営)
「教育データの取り扱いに関する課題」 - 神内 聡 教授(兵庫教育大学大学院准教授・弁護士)
○活発な意見交換のあと、座長の堀田教授より、留意点についての議論は、よりよい活用、健全な活用の仕方のために設けようとしているものであり、スタディ・ログのデータは、当然子どもたちのものであると前提した上で、「先生たちは、子どもたちのかすかな変化を捉えながら指導している。そんなかすかな変化を、デジタルでどう捉えるか。つまり、適切な教育利用を誰がどうするかのユースケースを明らかにすることが課題となる」との指摘がありました。
▶︎関連資料
教育データの利活用に関する有識者会議(第9回)会議資料
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00381.html