●実践①、②を終えて
今回の実践を通して明らかになったことは、大きく二つある。
一つは、アナログによる教材提示にもデジタルによる教材提示にも、それぞれによさがあるということである。だからこそ、この授業でどのように教材提示をするのかは、授業者の指導観、特に教材観を明確にもっておくことが重要である。
二つは、板書のことを考えると場面絵はアナログ(デジタルデータの画像を印刷して提示)が断然よいということである。資料1は実践①の板書である。

写真のように、場面絵を印刷して黒板に流れに沿って提示していくと、思考の流れも分かりやすい。また、板書を一枚の絵として俯瞰的に見たり、前の場面との変化をとらえて行き来しながら何度も考えたりすることができる。
一方、資料2は実践②の授業風景である。このように、場面絵をモニターテレビに映して提示していくと、写真のように一枚ごとしか提示できない。そうなると、児童が立ち戻ってもう一度考えたいと思っても、その場面はもうモニターに映ってはおらず、十分に考えることができなくなる。よって、教材提示の方法は、教材の特徴や授業者の指導観によって選択したとしても、場面絵だけはデジタルデータを印刷して黒板に提示していくアナログ方式がよいと考える。

●教材提示に関する児童の声(アンケート)
資料3の円グラフは、児童に教材提示の方法について尋ねたアンケート結果である。圧倒的に「どちらでもよい」という回答が多く、児童は教材提示の方法には特にこだわりはないようであった。また、回答の理由の主なものは表4のとおりである。

| 回答 | 理由 |
|---|---|
| 先生が読む | 集中できる |
| 先生が読んだ方が,感情や心情が伝わりやすい | |
| スライドで聞く | 動画だったらみんなと同じテンポで授業をすることができる |
| 画像があって分かりやすい | |
| どちらでも | 先生が読んでも分かりやすいし,動画などを見ることで,しっかりちゃんと聞けるし,感情が伝わりやすい |
教材の準備効率化や共有のための工夫
筆者が初任のころの平成十年代は、教科書のデジタルデータというものが存在していなかったため、教材準備にはかなりの時間と労力を注がざるを得なかった。
しかし、今はデジタル化が進み、デジタルデータを何度でもプリントアウトをすることができるため、教材を簡単に準備できるようになった。また、作った教材は、授業後同学年の先生と共有することはあっても次年度まで取っておくことはしなくなった。したがって準備効率化の「工夫」という工夫はほとんどしていない。今まで膨大な時間をかけていた教材提示の準備を簡単に行うことができるようになった分の時間を、展開を考えたり、板書構成を考えたりする時間に割くことができるようになった。
教材提示の重要性
本稿では、教材提示の「方法」を中心に述べてきたが、明確な指導観に基づく、明確な教材提示の意図があれば、教師にとっても児童にとっても教材提示の方法はさほど大きな問題ではない。
また、教科書会社各社のご努力もあり、教材の準備はデジタル化し、教材準備は随分と楽になった。アナログの教材提示もデジタルの教材提示も、どちらも選択できる今の時代、教師は両者のよさを十分に理解し、併用しながら、児童にとっても教師にとっても、最もよい教材提示の方法を選び取っていけばよいと考える。
(『道徳と特別活動』2024年12月号)




