
東京都北区立東十条小学校 主任教諭
松本 友美
オリエンテーション
年度替わりの時期は、授業をアップデートするチャンスである。特に、通年で取り組もうとすることについては、確実に計画を立てておく必要がある。ワークシートやノート、黒板や壁面の掲示物、話合いや振り返りに関する手立てなどが考えられる。円滑に始められるようにするには、年度始めにオリエンテーションを行うとよいだろう。本稿では、オリエンテーションの準備と実際の授業のポイントを紹介する。
オリエンテーションで押さえること
⑴道徳科の目標
道徳科授業のオリエンテーションにおいて重要なのは、道徳科を学ぶ先にあるゴールを指導者を含む学級全員がしっかりと見据えることだと考える。中学年での初回授業の冒頭で、道徳科と国語科との違いを話題として考えさせた例を挙げる。
T 国語も道徳もお話を読んで考えることがありますね。何が違うのでしょう。
C 国語は「国の言葉」ということだから、言葉の勉強だと思う。
C 道徳では、最後に自分のことを考える時間がある。
T さすがですね。国語では、お話を読んで言葉を学びます。道徳では、お話を通して「自分はどうか」と考えます。自分自身と向き合い、自分の生き方を考えるのが、道徳の学習です。
C えーっ。生き方を考えるの。
T 誰もが「よく生きよう」という気持ちをもっているけれど、なかなかいつも完璧ではいられないでしょう。先生もそうです。週に一回、今の自分自身を見つめて、豊かな心を育てていきましょう。
⑵「真剣に、安心して」発言できるルールを伝える
⑴の指導は授業冒頭の五分程度で行い、その後は通常の授業を進めながらポイントを確認していく。発問を進める中で、発言をする際に大切なことを伝えるとよい。
T 道徳の学習で大切なのは、「自分自身」でしたね。一人一人が違う人なのですから、みんなの答えもそれぞれです。真剣に考えたのであれば、それがあなたの答えです。安心して発言しましょう。
⑶みんなと学ぶ
児童は、学級の友達と話し合い、様々な価値観に触れる中で他者理解を深めていく。⑵の指導に続けて、対話的・協働的な学習の価値についても伝えていく。
T 一人一人が違う人だということは、それだけたくさんの考え方があるということです。友達との話合いが、「自分はどうか」と考えるヒントになることもあるでしょう。みんなと学ぶというのは、とても重要なことなのです。
⑷人間の弱さを受け止める
児童はみな、「正しくありたい」と思っている。しかし、実際には「分かってはいるができない」ということのほうが多く、それが人間らしさである。人間の弱さを知ることは、生き方を考える第一歩と考える。できれば初回授業でも人間理解を扱えるとよい。オリエンテーションの中では、私は主に次の⑸の振り返りで指導している。
⑸「今の」自分を見つめる
「これからは……したい」と、今後の自分の在り方を振り返りとして表現する児童も少なくない。道徳的実践意欲の表れと捉えられるが、自分と向き合わなくとも書けてしまう表現ともいえる。「『今の』自分はどうか」と立ち止まった上で、未来に目を向けることを伝えたい。
初回授業の前に準備すること
●ワークシートの準備
①表紙(資料1)
オリエンテーションは、一年間の学びの道しるべである。いつでも立ち返ることができるよう、特に大切にしたいことに絞って、ワークシートの表紙に記している。

②今の自分を見つめるスケール(資料2)
展開後段で、「自分はどのくらいできているか」と振り返るための五段階のスケールを用意している。児童は自分の位置を決めるために、必然的に「今の自分」を見つめ、できていることを見付けようとする。また、「分かってはいるけどできない」という弱さが誰にでもあることを互いに認め合う風土をつくり、人間理解を深める意図もある。資料2は、四年生で使用したスケールである。
ただし、数値化がそぐわない内容や発達の段階では避けること、スケールに「ゼロ」は入れない(できていることを見つめさせる)などの注意が必要である。

③内容項目表(資料3)
終末で、本時のねらいとする道徳的価値にチェックさせる活動を準備している。本校の教師が取り組んでいたもので、許可を得て掲載させていただく。担当学年によって工夫し、新たに取り入れたい。

まとめ
「オリエンテーションで何を伝えるのか」を考えることは、取りも直さず一年間の道徳授業を考えることである。道徳科が楽しく充実した学びの時間となるよう、指導者もまた楽しみながら、新年度に向けて準備を進めたい。
(『道徳と特別活動』2024年4月号)




