【本時から事後】本時から事後までの工夫 一人一人の意見を大切に

―本時から事後の活動において―

熊本市立黒髪小学校 教諭

有内 文香
授業実践 第五学年

はじめに

 学級会を行うとき、「今日は何となく意見が噛み合っていないな」と思うことがある。話し合う目的が共有されていない場合や受け取り方にずれがある場合など、様々な理由が考えられる。学級は、多様な個性をもった児童の社会でもある。一人一人の意見が受け入れられる土壌を作っていくことが協働的な学びの第一歩だと感じている。本稿では、学級会本時から実践までの中で、意見を共有する場面についていくつか紹介していきたい。

授業実践 第五学年

●学級会本時の意見共有

 今日は何のために話し合うのかという目的を、全員で共有することが大切である。事前に学級会のお知らせをするときにも提案理由を伝えると思うが、学級会当日にも提示し、会のはじめに確認する。その際、全員が理解できるようキーワード化したり、四角で囲んでひと目で目的を思い出すことができるようにしたりしておく。

 何にするかを話し合う場合、たくさんの意見が出揃い、ただ時間が流れてしまう話合いになる場合がある。そのときは意見を分類・整理し、絞っていく必要がある。
 また、キーワード化も有効である。例えば、学級目標を決定するとき(※1)、「こんな学級にしたい」という思いが広がっていきなかなか収束できないことがある。そうしたときに出された意見を全体でキーワードにまとめながら、それぞれの意見を共有する時間をとる。思いの共有がなされていれば、決まった目標の意味を全員が理解することになる。学級目標を決める実践の最終決定は「みんなで仲良く、超無敵なスーパー5の1」であった。ほかの人が聞けば曖昧(あいまい)な言葉が並んでいるが、「仲良く」には助け合って安心して過ごせる仲間という思い、「無敵」には何事もチャレンジし乗り越えるという思い、「スーパー」にはやるときはやることで信頼され成長していくという思いが込められている(※1学級目標を決める前に、学級活動⑶で「こんな5年生になりたい」という学習をし、一人一人が意思決定をした。その後、学級全員の目標を決めたいという議題が上がり、学級会を行った)。

資料1 一人一人の意見をキーワード化してまとめた図

○事前の準備
 学級会までに話合いノートに自分の意見をまとめておく。そのノートの写真を撮り、タブレット端末にアップしておくことで、意見を比べ合うときに活用することができる。アナログとデジタルどちらも使っているのは、司会グループが意見を分類するときにはアナログのほうがやりやすいためである。
 よりよい考えを生み出すためには、友達の意見を理解した上で話し合わなければならない。なぜそう考えたのかという思いを共有することで、どの意見に賛成するのか、どの部分が心配なのかと比べ合うことができる。

○話合いの実践例①
『学級目標をどう掲示するか』を話し合いたいという声があがった。それぞれの学級ではシンボルマークなどが決まり、学級の旗として掲示したり、一人一文字担当して、貼り付けていったりと工夫されていることと思う。
 この時は、決まった目標を早く掲示したいというところから、議題となった。事前にタブレット端末でデザイン案を持ち寄り、話し合うことにした(資料2・左)。それぞれが書いたデザインを全員で見ることができるよう設定し、比べ合う時間をとりながら進めた。
 手元で端末を見ることで、それぞれの意見のよさを見つけ、「AさんとBさんの意見をこのように合わせてはどうか」や「Cさんのアイデアをさらにこうしたらよいのではないか」という新しいアイデアも生み出しやすい。一人一人の個性も大事にしたいという児童の懸命なやりとりが、全員の納得にもつながっていく。完成した目標の周りには、一人一人が目標に向かっていくぞという手に頑張りたいと思うことを握りしめている(資料2・右)。無敵というイメージの炎、バックの虹色はみんな違うけれど力を合わせていくという意味が込められている。

資料2 一人一人が出したデザイン案(左)と、それを基に決定した掲示デザイン(右)

○話合いの実践例②
「学級のキャラクターを作りたい」という議題が挙がった。学級目標を意識したり、自分の学級を大切に思ったりするために、生活の様々な場面で活用していきたいという目的だ。
 まずは、話合い①同様、それぞれのアイデアをもち寄る。この実践では一人一人が紙に描いたものを貼り出し、全員で見合う形にした。次に、黒板の前に集まり考えを伝え合う時間をとる。全体の場では意見を出すことができない児童も、ここでは互いに質問し合ったり、よさを見つけ合ったりしていた。すると「ベースのものを決めよう」という意見が生まれた。そこからタブレット端末に切り替え、ベースのイラストに何をどう加えたら、みんなの思いを表すことができるか考えた。
 ICT端末等を目的に応じて取り入れることで、すぐに意見を共有したり比べたり、さらに付け加えたりすることが簡単にできる。また、イラストが苦手な児童も友達が描いたものを元に色付けをするなど、手軽に取り組むことができることも利点である。

 意見を比べ合う場面では、どう伝え合うかも重要である。「〜がよいと思います」だけでは決めることができない。初期の段階でなぜその意見がよいのか、提案理由や学級目標などに立ち返り、伝えていくよう言葉掛けをする。
 また、よりよいものを決めていくときは反対意見も大切にしたい。反対の場合も、何が気になるのか、どうすれば納得できるかなどの理由を聞き、話合いの中で取り上げていく。司会の言葉としては、次のようなものが考えられる。今出た意見に対してどう思うか、どうしてそう思うのかとつながっていくよう進めることも意識していく。

今の意見はどうですか。
今の意見に賛成(反対)の人の理由を聞かせてください。
AとBを比べるとどうですか。
これでは心配だな(困る)ということはありませんか。

 最終的に合意を図るときも、「Aの意見に決まりそうですが、Bの意見だった人はよいですか」と最終確認をし、少数意見にも最後まで目を向けることが大切である。
 このように、それぞれの考えの意図が分かりどこに向かっていくのかが明確になっていくと、一つ一つの意見が大切にされながら合意にたどり着く。また、意見を出し合うときには挙手して指名する形だけでなく、意見を伝えた児童が「○○さんの考えを聞きたいです」とつなげていくなどの工夫もしたい。

●話合い後の実践の中での意見共有

 学級会で決めたことを実際に進めていくときに、児童に任せっぱなしになることはないだろうか。もちろん、児童の自主的な活動を促すことは大切であるが、教師も学級の一員として進める手伝いをする。具体的には以下のような働き掛けが考えられる。

○実施日までのカレンダー
○朝の会、帰りの会で進捗状況の確認
○必要な材料などの準備○
リハーサル(集会活動などの場合)

 最後に「学級の歌をつくろう」という議題で話し合った例を紹介する。学級会では、必ず入れたい言葉を中心に話合いが進んだ。応援コールのような方向で話がまとまり掛けたとき、ある児童が「応援は盛り上がっていいけれど、常に応援は重たい気がする。優しい歌で癒されたい」と呟いた。その意見を聞いたほかの児童は、確かにそうかもしれないともう一度考え直し、応援コールと替え歌二本立てにすることが決定した。
 二つのチームに分かれ、学級会で出た言葉を取り入れていくというところで、共有で作業できるタブレット端末内ノートを作った(資料3)。それぞれが自分のチームのノートに意見を書く。それを見て、さらに付け加えをしたり、もっとよい意見はないかと深めたりしていく様子が見られた。どちらのノートも誰でものぞくことができるので、互いの進捗状況もうかがえる。放課後の時間も家にいながら時間を決めてやりとりをし、分かりづらいところは翌日学校でリアルに話し合うという繰り返しで作り上げていった。

資料3 応援コールチーム(左)と替え歌チーム(右)の話合いのノート

・誰が参加できているか確認し、参加できなかった友達にも翌日報告しながら行っていた。
・どちらのチームも、タブレット上のやりとりのなかでルールを作って進めていた。

おわりに

 多様な個性が集まった学級で全員が賛成して決めることはたいへん難しい。しかし、一人一人の考えは「その児童だからこそ」のこともある。大切なのはどのような思いでその意見を出したのか、どのような経験を基に話しているのか、と児童が互いを見つめることだと考える。だからこそ、ときには譲れない思いをぶつけ合い、こだわり合う中で決まっていく過程も大事にしたい。一人一人の意見を共有するということは相手理解でもある。

(『道徳と特別活動』2024年8月号)