【高学年】よりよい人間関係の形成を目指し,「選ぶ」話合いから「生み出す」話合いへ

沖縄県浦添市立仲西小学校

教諭 根間 成美
実践紹介 第六学年

はじめに

 本校では、合意形成の手順や活動の方法を身に付けるために計画的な学級活動の実践を組織的に取り組んでいる。学級や学校の生活をよりよくするための課題を見いだし、解決するために話し合い、多様な意見を出し合い、くらべ合いながら合意形成を図り、協働して実践し、学級活動を通して身に付けたい資質・能力を育むことを目指している。
『小学校学習指導要領 解説 特別活動編』(以下、解説と略記)には「児童にどのような資質・能力を育みたいのかという本質を大事にして、児童が発展的に新しいものを生み出していくことができるようにすることが大切である」と示されている。つまり、学級における児童の実態や発達の段階を踏まえ、「選ぶ」話合いから、段階的に互いの考えのよさを生かした新たな考えを「生み出す」話合いへ転換していかなければならないのである。それが実践を通して新たな価値を生み出すことにつながり、そのような実践の積み重ねが、将来のよりよい社会を創り出すことができる貴重な経験となり、児童のたくましく生きる力になると考える。

 学級会では、課題に係る学級の状況にもよるが、安易に多数決で決定することは避けたい。互いの意見を尊重し、意見の根底にある考えを批判的に聞き合い、くらべ合いながら折り合いを付け、合意形成を図り、集団として意見をまとめていくことが大切だと考える。ここでは、合意形成を図るためのポイントについて考えてみたい(図1)。

図1 合意形成に向けた「出し合う」から「くらべ合う」のイメージ

 意見を「出し合う」場面で出された提案内容を、でこぼこの形ABCDとして表す。出されたそれぞれの提案内容を一度聞いただけで、くらべ合い、決めていくことは難しく、新たな考えを「生み出す」話合いとは言えない。これまで、意見を一度に上手く伝えることができる児童の考えを十分にくらべ合うことなく、そのまま決まってしまうことはなかっただろうか。ほとんどの児童は、一度で自分の考えの全てを表出することはできない。だからこそ、複数回に分けて自分の考えを表出していく。そのためには、仲間からの批判的な質問(よりよくするための問い)は不可欠である。出された意見を理解するために、質問を通して意見の内容やそこに込められている思いを確認していく。そうすることで一度では聞き取れなかった仲間の考えを知り、その真意を理解することができる。この活動こそが「くらべ合う」ことにつながる。提案された内容ABCDのいずれかの案を実践するとしたら、他の方法やよりよい工夫はないか、実践する上で足りないと思われる内容を(図1の右の灰色部分)自分事として考え補っていくことが大切である。出された意見をくらべ合いながら、新たな考えを「生み出す」状況を創り出し、みんなの意見を建設的に合わせていく「合意形成」を目指す。このような経験の積み重ねが、自身の考えに固執することなく、客観的に思考する力を身に付けていくことにつながると考える。「くらべ合う」時間を充実させることは、合意形成を図るために重要であり、児童が主体となって取り組むためには、教師の児童に対する働き掛けが大切となる。解説においても「教師の適切な指導の下での、学級としての議題選定や話合い、合意形成とそれに基づく実践を重視する」と示されている。児童の思いや願いを大切にした上での教師の意図的・計画的な指導が豊かな実践につながるのである。
 また、話合いの視点がずれていたり、いろいろな意見を整理したりすることができていない場合、うまく合意形成を図ることができないことがある。事前の活動で互いの思いを共有することはもちろんであるが、話合いの流れや考えを可視化・操作化・構造化することで、児童の思考を整理したり促したりすることが、より話合いをスムーズに進め、深めることにつながると考える。
 本稿では、児童が主体となり、互いのよさを生かして創造的な合意形成を目指した実践について紹介する。実践①では「くらべ合う」学習過程における教師の関わり、実践②では「くらべ合う」学習過程における思考の可視化について紹介する。

実践紹介 第六学年

資料1 実践①の板書

⑴議題が選定されるまで
 一学期は、一年間全ての活動を通して意識する「学級の合言葉」をみんなで話し合い、児童が安心して過ごすことのできる学級を目指して取り組んできた。しかし、特定の仲のよい友達との関わりが多く、特に男女の関わりに課題が見られた。そこで、「One for all All foe one ~みんななかよし602」の合言葉を目指し、学級みんなで仲よく互いを尊重することを意識した集会活動に取り組むことで、二学期の授業や学級生活、学校行事につなげたいという思いから議題が提案された。

⑵ 学級会での教師の関わり
 学級会は、児童が中心となって話合いを進めてまとめていくが、教師は、児童の発言から話し合い、全体の流れを捉えたり、一人一人の考えを注意深く聞き取ったりすることで、話合いの状況を適切に把握し、機会を捉えた指導助言が必要となる。児童の主体性をより伸ばすために多様な考えを認める支持的風土を醸成する温かい雰囲気づくりを心掛け、資料2のように児童の思いや願いを尊重しながら話し合い、実践イメージをもたせることができるような働き掛けを行った。

資料2 学級会での教師の関わり

⑶本時の「くらべ合う」場面
 くらべ合う視点を明確にしてみよう。提案理由は何でしたか。
 提案理由は男女の仲が深まり、みんなが尊重し合える二組になる。
 障害物競争でチーム戦にしたらチームで協力できるのではないか。
 でも、ケガをしないか不安。
 障害物ではなくて途中にミッションを入れたらどうかな。
 みんなが助け合って参加できるようなミッションにしたらよいと思う。
 だるまさんがころんだもやっぱりしたい。一年生の頃を思い出したい。
 (つぶやき)借り物競争しながらだるまさんがころんだは……。
 途中で止まってミッションを入れたらよいのではないかな。
 誰の声かを当てるミッションにしたらいい。
 オリジナルルールにしたらいいよ。
 障害物借り物競争をチームでミッションにしたらよいのではないかな。
全員 ミッションリレーにしよう。
 本時では、提案された意見をそのまま決めるのではなく、出てきた意見のよさを「ミッション」という形でくらべ合い、みんなが必然的に協力できる内容に合意形成する姿が見られた。事後の集会活動でもチーム対抗戦でミッションリレーを楽しみながら互いのよさを見つけ出し学級だけのオリジナルルールの下、役割分担をしながら集会に向けた準備に取り組み、仲を深めることができた。

⑴議題が選定されるまで 九月実践
 児童会の代表委員会において、各委員会が、学校全体をレベルアップするためにどうしたらよいのか話し合った。活動の改善に向けて各委員会での課題がたくさん挙げられたが、各学級でも同様に課題があることを確認し、代表委員会での経験から各学級での生活改善に向けたレベルアップ大作戦の実践が提案された議題である。

⑵学級への思いを高める事前の活動
 学級における生活をよりよくするための議題においては、事前に児童が学級の現状を把握し、これからどのようなことを意識したらよいのか全員の思いを共有することが大切だと考える。そこで、思考ツールを活用し、今の学級のよさや課題について見いだした(資料3)。

資料3 事前の活動のテキストマイニングの一部

⑶ 目的意識を明確にし、話合いの充実につながる提案理由
 一つ一つの言葉に思いを込め、提案者の思いを学級全体へとつなげ、思いを高めることができるようにする。児童に「レベルアップとはどういうことだと思いますか」と問うと、「できないことができるようになる」「頑張ってもうまくできなかったり、分からなかったりしても諦めない自分になること」という返答があり、学級における言葉の意味を確認することができた。さらに「そのためにどのようなことができそうですか」と問い返すと、「一人ではなくてみんなで意識して互いに関わることが大切ではないか」との声が挙がった。なぜその提案理由なのか、何のために話し合い、実践するのかを提案理由を通して共通確認し、全員の思いを共有することができる。提案理由は学級会における「くらべ合う」にもつながるのである。
 学級全員がレベルアップするためには、どうしたらよいと思いますか。(一部の意見のみで話が進まないよう、グループで考えを共有する)
 メリハリをつけることと切り替えって何が違うのかな。
 私は切り替えはできているけど、メリハリはついていない気がする。
 どういうことですか。
 言われたらできていると思うから。
 切り替えとメリハリの違いって何だろう。
 メリハリと切り替えは意味がほぼ一緒だと思う。
 それと関連した意見はありますか。
 切り替えは気持ちの切り替え、メリハリはやるときはやる、休むときは休むということかも。
 切り替えは気持ちを入れ替えるだけだけれど、メリハリは行動が変わることということかな。
 言葉の意味を調べた児童がいたがなかなか発表できなかったため、教師が調べたことを伝えるよう促す。
 切り替えは「ひとつの状態や行動から別の状態や行動に移すこと」、メリハリは「行動や状態の変化によって明確な区別があること」だそうです。
 どういうことかな。
 切り替えは言われて行動できるけど、メリハリは自分から気付いて行動することかな。
 切り替えもメリハリも似たような意味だけど、今の学級にとってはメリハリが必要。
 このように児童は、「切り替え」と「メリハリ」の意味の違いを理解し、今の学級に必要な新たな意識・行動目標を生み出そうと真剣にくらべ合い、学級としての思いを込めた意見へと創りあげることができた。しかし、より深くくらべ合うためには、「切り替える姿」「メリハリのある姿」の具体的な場面を共有することが必要だったとではないかと振り返る。

⑷ICTを活用した思考の可視化
 事前の活動で、どの意見が学級全体のレベルアップにつながるのか、思考ツールを使ってあらかじめ出てきた意見について一人一人の考えを可視化できるようにした。そうすることで、一つの意見に固執することなく、出てきた意見全てに自分の思いをもつことができた。さらに全体での「くらべ合う」場面で司会グループが電子黒板に思考ツールを提示することにより、思考が整理され、よりよい合意形成を目指すことができた。出てきた意見を見比べながらそれぞれのよさを生かし、学級がレベルアップするための視点について目を向けることで創造的な合意形成を図ることができた。

おわりに

「選ぶ」話合いから新たな考えを「生み出す」話合いへと転換し、よりよい合意形成を図るためには、「くらべ合う」の充実が重要であり、その質の高まりが、仲間の思いをつなげ、人間関係をよりよくしていくことにつながっていく。私自身、学級活動を中心に学級経営の充実をめざし、児童に向き合っている。学級活動を積み重ねることで教師と児童、児童同士の関係をよりよくし、よりよい学級を創ることにつながっていることを実感している。
 これからも特別活動、学級活動のもつ力を信じて児童との関わりを楽しみながら実践を積み重ねていきたい。

(『道徳と特別活動』2024年12月号)