【価値理解】明確な意図に基づく板書

埼玉県日高市立高根小中学校 教諭

星野 嘉之
授業実践 第六学年

はじめに

『小学校学習指導要領解説特別の教科道徳編』(以下、解説と略記)には、道徳科に生かす指導方法の工夫例が示されている。その一つが「板書を生かす工夫」である。解説には「教師が明確な意図をもって対比的、構造的に示したり、中心部分を浮き立たせたりするなどの工夫をすることが大切である」と示されている。本稿では、指導者の意図に基づいた板書の在り方について考察していく。

指導方法の工夫で大切なこと

 道徳科の学習では、ねらいとする道徳的価値について「何を考えさせるか」、つまり指導の方向性となる明確な意図をもつことが何よりも大切である。本時で考えさせたいことが明確になることで、意図をもった指導方法の工夫が可能となる。指導の意図を明確にするためには、「主題設定の理由」を構想する過程が重要である。主題設定の理由は、解説によると「①ねらいや指導内容についての教師の捉え方、②それに関連する児童のこれまでの学習状況や実態と教師の願い、③使用する教材の特質やそれを生かす具体的な活用方法などを記述する」と示されている。

授業実践 第六学年

主題名

自分を成長させてくれるもの A[希望と勇気、努力と強い意志]

ねらい

より高い目標を立て、希望と勇気をもち、困難があってもくじけずに努力して物事をやり抜こうとする態度を育てる。

教材名 「夢」(東京書籍「新訂 新しい道徳⑥」)

●主題設定の理由(一部省略したもの)

 ①価値観(学習指導要領の「内容項目の概要」や「指導の要点」に基づいて記述)や②児童観(ねらいとする道徳的価値を視点とした児童の実態を記述)を踏まえ、指導の意図を次のように設定する(資料1)

①価値観より高い目標をもつことの大切さについて考えられるようにしたい。
②児童観目標をもつことの大切さは理解している児童が多い傾向にある。一方,最後まで粘り強く目標に向かって努力を続ける姿勢が見られない実態がある。
指導の意図夢や目標をもち,継続的に努力することの難しさや大切さを多面的に考えさせたい。
資料1 主題設定の理由

 このように、指導の意図を明確にした後に、教材のどの場面でどのように指導をするのか、様々な指導方法の工夫について構想していく(資料2)。

③教材観教材で扱う場面指導の意図板書を生かす工夫
高校時代,腰痛で練習ができなくなり,球を追いかける仲間の姿を見てたたずむ場面。継続的に努力し続けることの難しさについて考えさせる。
【人間理解を意図】
人間理解に関わる児童の発言を可視化できるように板書する。
入団テストの合格発表で,「ぼく」の名前が呼ばれなかった場面。夢や希望をもつことの大切さや継続的に努力することの難しさについて多面的に考えさせる。
【人間理解を意図】
【価値理解を意図】
人間理解と価値理解に関わる児童の発言を対比できるように板書する。
夢が叶わなかった「ぼく」の心が,実にすがすがしいものであった場面。
〈中心場面〉
夢や希望をもつことや継続的に努力することの大切さについて考えさせる。
【価値理解を意図】
価値理解に関わる児童の発言を課題に正対するように板書する。
資料2 本時の教材観

●学習指導過程(導入と終末は省略)

発問
展開①練習する仲間の姿を見ながらぼうっとしている「ぼく」の心の中は,どんなでしょうか。【人間理解を意図】
②最後の入団テストの合格発表で,ついに名前が呼ばれなかったとき「ぼく」はどのようなことを思ったでしょうか。【人間理解と価値理解を意図】
③夢が叶わなかった「ぼく」の心が,実にすがすがしいものであったのはなぜでしょうか。【価値理解を意図】
〈考えを深める問い返し〉夢や目標をもつことには,どのような意味が込められているのでしょうか

●本地の板書(上記の発問をした後に,児童の考えを整理しながら板書する)

 発問をした後、場面絵を大型テレビに映すことにより、どの場面の状況を考えているのか、また児童の登場人物への自我関与を深める工夫をした。板書では、人間理解と価値理解に関する児童の発言(発問①と②)を左右で対比できるように配置した。
 また、本時で最も考えさせたい価値理解に関する発言(発問③)を課題のすぐ近くに示すことで、本時の学習で何を考えてきたのかを分かりやすいようにした。児童に何を考えさせるか明確な意図をもつことで、発問後の多様な考え方や感じ方を構造的に整理しながら板書することが可能となる。

おわりに

 道徳科における指導方法の工夫は、指導の方向性となる明確な意図をもつことからスタートする。今後も、明確な意図に基づく指導方法の工夫により、一本筋の通った道徳科の授業を目指して実践を重ねていきたい。

(『道徳と特別活動』2024年6月号)

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