【児童が既に理解している内容項目】「当たり前」の先を児童と考える授業

授業実践 第三学年

 本時の教材は「友だち屋」である。「友達は大切である」という「当たり前」のさらにその先を考えていくため、当日は児童のつぶやきを基に、上記の授業計画を変えていった。

主題名

「友達になる」 B[友情、信頼]

ねらい

友達を大切に思う心情を育む。

教材名 「友だち屋」(出典:光文書院「ゆたかなこころ 3年」)

 キツネは一時間百円で、相手の言うことをなんでもきく「友だち屋」をやっている。ある日キツネは「友だち」になったオオカミに、いつものようにお金を請求したところオオカミは激怒する。「お金などもらわなくても友だちは友だちだ」というオオカミの言葉にキツネは自分の考えを改め、その後、友達にお金を請求しなくなったという話である。この話には「お金で買った友情は本物か」という問いがあり、「友情とは何なのか」を児童が改めて見つめ直すことができる教材だといえる。

 教師の範読を聞いた時点で、キツネの行動に対して、「友達なのにお金をもらってはダメだよ」という児童の声があちこちで聞こえてきた。児童の中に「友達関係で大切なのはお金ではない」という認識が既にあるようだった。そのため、本時では「友情で本当に大切なものは何か」という部分にさらに迫れるように当初の計画を変更することにした。

 範読中のつぶやきが多かったので、まず教材を読んで、何が気になったのかを児童に聞いてみることにした。「まず友達になってあげるという発想がよくない」「お金は人間関係を壊す」といった意見のほかに、私が気になった児童の意見があった。「オオカミは自分の一番大切なおもちゃをキツネにあげているけどそれはよいのか」というA児の問いである。
 この教材では一見、オオカミの行動がすばらしく描かれているが、実はオオカミも、お金ではないが物品をキツネに与えている。A児の「問い」に児童が興味をもったので、「友情における、物やお金のやりとり」について考えることから始めた。

 さっきみんなはオオカミの考えはすばらしいと言っていたけれど、Aさんの言うように友達に自分の大切なものをあげるのはよいことなのでしょうか。命もあげられるのですか。

このように、教材の条件を変えて尋ねることで、新しい発見につながることがある。

 命やお金はだめだけれど、折り紙で作ったものとか気持ちがこもっているものならよいと思う。
 では、町で知らない子から折り紙で作ったプレゼントを渡されたら、君たちはその子と友達になりますか。

 このように極端に条件を変えて問い返しをしたのは、児童の考えた理論がどのような場面でも通用するかを確認できると思ったためである。

 それは違うよ、急にそんなことされたらびっくりする。その人との関係やタイミングができているからプレゼントをもらえる。

 つまり「友達にものを渡すこと」には「気持ち」「関係性」「タイミング」などが大切であることがこのやりとりで整理された。

 授業後半の残り二十五分は、当初計画していた発問を児童に尋ねることにした。

 みなさんは、「①お金をあげたら何でも言うことを聞いてくれる友達」と「②お金は必要ないが、厳しいことも言ったり喧嘩もしたりする友達」どちらがよい友達だと思いますか。

 このように尋ねると、児童からは「①は絶対にありえない」と次々に意見が出た。「②のように厳しくても、自分のために助言してくれる友達のほうが自分を成長させてくれる」のだという。既に大切なことが分かっている児童に①と②を議論しても意味がないので、今の児童にとっての「当たり前の先」は何かを考えた。そこで当初の計画になかった「③お金も必要ないし、喧嘩もしないし厳しいことも言わない友達」の選択肢を新たに加えることにした。

 では、③ならどうですか。いつも優しくしてくれるこの③の友達が一番よいのではないですか。
 誉められてばかりだと、本当のことを言っているのかなと疑ってしまう。
 自分は②と③の中間がよいと思う。
 そもそも人によってよい友達と思うイメージは違う。

 このような意見が出され、「友情はお金で買えない」という価値以外にも、友情に関する様々な価値観を児童と見付けていくことができた。学習の最後に各々が「自分にとってよい友達とは」を振り返りに書いて授業を終えた。

おわりに

 児童の振り返りの中で「完璧な友達なんてこの世にいないと思う」「普通の友達って結構難しいのだな」といった感想が印象的だった。児童の素直な意見を生かしていくと当初計画していたものより深い発見がある。教師のねらいや意図を飛び越える発言が突然生まれることがあるからこそ授業は面白いといえる。自分や児童にとっての「当たり前」は何かを考え、常にその先を授業で「更新していくこと」を意識したい。これからも児童と「新しい学び」をつくることを楽しみ続けたい。

資料 本時の板書

(『道徳と特別活動』2025年6月号)

ABOUT US
アバター画像
ぶんけい教育研究所 チーム運営者
ぶんけい教育研究所は、株式会社文溪堂の編集部が運営する「主体的・対話的で深い学び」の視点から授業と学習評価の改善に積極的に取り組む小学校の先生を応援する情報サイトです。
投稿記事はこちらから