【他者理解】他者理解を意図した板書

―一年生「くりのみ」の実践を通して―

東京都立川市立若葉台小学校 教諭

根岸 陽月
授業実践 第一学年

 道徳性を養うために大切にしたいことの一つとして、教材の登場人物や友達の考えに触れ、新たな道徳的諸価値に気付いたり、これまでの道徳的諸価値を再構築したりすることが挙げられる。他者(登場人物や友達等)から、自分と共通する考えや自分では気付かなかった考えを得ることで、より柔軟に物事を考えることができるようになる。そのような授業にするためには、事前の教材研究や授業者の明確な指導観、発問が重要である。そして、それらを充実させた上で授業を実践する際に欠かせないのが板書計画である。
 板書は児童にとって分かりやすく、見やすいものでなければならない。それを実現する板書の方法の一つとして構造的な板書がある。複数の登場人物の考えや、それらの考えに対する児童の考えを構造的に板書することで、教材の状況や児童の考えを整理することができ、他者理解の一助となる。そして、振り返りの際に板書を見て、より自己の生き方を深めることができる。本稿では他者理解を意図した構造的な板書するための三つの視点を紹介する。

授業実践 第一学年

主題名

友達を大切にするってどういうこと? B[友情、信頼]

ねらい

自分のことを優先してしまう気持ちに共感しつつ、友達のために自分ができることをして、助け合おうとする心情を育む。

教材名 「くりのみ」(学研「新・みんなのどうとく1)

資料 本時の板書

 道徳科では、児童が考えを共有していく中で、新たな気付きや変容等が見られることが望ましい。この様子を黒板中央に書くことで、児童も自分の新たな気付きや変容等がより実感できると考える。また、つながりがあるように書くことで、より捉えやすくなる。
 本実践では、「友達を大切にするとはどういうことでしょう」と導入で問いかけ、雲形枠内に児童の考えを書いた。そして、終末で「今日の学習で友達を大切にするとはどのようなことだと思いましたか」と発問し、それを雲形枠の下部に置き、つながりや比較ができるように書いた。児童からは「本当のことを言う」「自分から」という新たな気付きが生まれ、さらに「話しかけることは大切」と再認識する様子が見られた。

 他者理解をする上で大切なのは、各教材に登場してくる人物を一人に限定して発問するのではなく、多様な視点や考え方に触れることができる発問である。そして、「考え方は多様である」という視点を踏まえて、道徳的価値について考えていくことである。それを黒板に表すために、登場人物が二人であれば左右に、三人であれば三角形に黒板を大きく使い、多様な考えが黒板に表れるようにしたい。
 本教材では、登場人物のきつねとうさぎの考え方が対比の関係にある。そのため、左側にきつねの行動やそれに対する児童の考え、右側にうさぎの行動やそれに対する児童の考えと設定した。また、一つ一つの場面を追う発問ではなく、きつねとうさぎの考えに触れられるよう、範読後に「このお話を聞いてどう思いましたか」と問い掛け、児童が気になった場面を整理しながら板書した。開かれた発問にしたことで多様な考えが表出され、自分と友達との考えの相違点なども実感でき、児童同士の考え方からも他者理解できるよう心掛けた。

 先述した開かれた発問は、実態に応じては難しいことも考えられるが、授業の回数を重ねるごとに児童自身が本質に迫れるようになるため、積極的に行っていきたい発問の一つである。
 本実践では、友達と会話をしていく中で「どうして、涙を流したのだろう」「その後、どうしたらよいのだろう」など、道徳的価値につながるような問いが出てきたため、より追究することとし、板書した。児童から出た問いとして板書することで、より主体的に活動する様子が見られた。「きつねは、最初はうさぎのことを大切にしていなかったけれど、大切にできそう」ときつねの行動全体を通じての考えも見られ、よりよい行動や心情について深めることができた
 加えて、児童から出た問いによって児童一人一人の考えが表出し、より充実した話合いになるようにICT端末等を活用した。黒板には発言があったものが中心となることが多いが、掲示板アプリを活用して児童同士で一人一人の考えを見る時間を設けた。本実践では、テーマについて幅が広がりそうな問い「この後、きつねさんはどうすればよいだろう」を掲示板アプリで共有し、友達の考えからよりよい生き方についての考えを深められるようにした。ICT端末等は便利である一方、使う場面は教師が事前に検討し、効果的な使い方になるよう心掛ける必要がある。

 以上はあくまで例であるが、道徳的価値と教材とに一体感のある構造的な板書にすることで、児童の意見がたくさん表出され、より道徳的価値への理解を深める時間としたい。

(『道徳と特別活動』2024年6月号)

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