
東京学芸大学附属世田谷小学校 教諭
箱﨑 由衣
内容項目の確認
はじめに
各学校の年間指導計画には、各学年段階を通して、全ての内容項目が調和的に関わり合いながら、児童の道徳性が養われるように配置されているであろう。効果的に児童の道徳性を養うために、相互の内容項目の関連を考慮しながら指導していく必要がある。私は、計画・発展的に指導に当たるため、二つの準備をしている。
⑴指導する内容項目の確認
まずは、年間を通して指導する内容項目の順序や、回数を確認する。
年間指導計画で「道徳科」を確認すると、年間に一度しか扱わない内容項目と、複数回扱う内容項目が見られるであろう。内容項目は、児童の道徳的価値を認識できる能力の程度や社会認識の広がり、生活技術の習熟度および発達の段階などを考慮し、最も指導の適時性のあるものを学年段階ごとに精選し示されている。そのため、『小学校学習指導要領解説特別の教科道徳編』に示されているとおり、低学年・中学年・高学年・中学校で指導内容が異なり、計画的に指導に当たることが求められている。例えば、A[正直、誠実]の場合は、低学年は、「正直であると気持ちよくすごすことにつながること」、中学年は「自分を偽らない、自分に正直でいること」、高学年は「自分自身の誠実な在り方」、中学校では「誇りから生まれる誠実さ」といったように、一つの内容項目でも、発達の段階において指導の重点は異なっているのである。よって、年間に一度しか扱わない内容項目は、その一時間で指導の重点を逃さないように授業を構成する必要がある。
⑵各時間の相互の関連を構想する
複数回扱う内容項目は、学校ごとに検討された重点内容項目や、児童や学校の実態に応じて重点的指導を要するものが配置されている。要するに、全校を挙げて重点的に指導をしようとしている内容項目なのである。複数回扱う内容項目に対しては、特に計画的、発展的に指導することができるよう、準備をすることが望ましい。
本校では、B[思いやり、親切]を重点内容項目の一つとし、年間三回扱う計画となっている。三回の授業から、児童の道徳的価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深める学習を行い、道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育んでいくことができる。そのため、私は年度始めにどのように三回の機会を連動させていくか、検討することがある。いくつか紹介をする。
①一つの視野を、異なる視座・視点で見る
B[思いやり、親切]に対して様々な視座に立ち、様々な視点で自己を見つめ、自己の生き方についての考えを深めていくことができればよいと考える(図1)。

低学年であれば、「身近にいる人に温かい気持ちで接するよさ」を重点的に指導する。そこで、「相手に温かい気持ちを向けられる喜び」「温かく優しい人のふるまいを見たときの思い」「相手に温かい気持ちを向けることができた喜び」といったように、指導のポイントを様々な視座から見られるように計画を立てる。例えば、一回目は「優しい言葉を掛けてもらって、○○さんはどう思ったでしょう」と、親切にされたときの喜びを分かち合う時間とする。二回目は、「親切にしていた○○さんを見て、周りの人はどう思ったでしょう」と、親切な行為に触れたときの心地よさを語り合い、三回目は、「優しくできたとき、○○さんは、どのような気持ちになったでしょう」と、相手に温かい気持ちを向けることができたときの思いを考えるようにする。様々な視座で考えていくことで、一つの内容項目の理解をより立体的に捉えることにつながり、一年間を通して、視野を広げていくことができる。
②異なる内容項目と関連させる
授業の中で取り扱うのは一つの内容項目でも、そこには様々な内容項目との関連がある。B[思いやり、親切]であれば、C[公正、公平、社会正義]との関連(自分の好き嫌いに捉われず、相手のことを思いやって接すること)。ほかにも、B[礼儀](真心をもって、相手の思いを推し量って接すること)など、まだまだ多くの内容項目との関連が考えられるであろう。複数回扱う内容項目においては、回数を重ねるごとに、様々な内容項目を通して考えてみることも、児童の思考を深める学びへとつながるであろう。
おわりに
以上のように、一つの内容項目でも、複数回扱う内容項目においては多面的・多角的に物事を捉え、自分のことと重ねて考えていくことができるよう、計画的・発展的に指導ができるよう検討していくことが好ましい。年度始めは、まず年間指導計画を確認し、複数扱う内容項目を確認し、これから担任する学級の児童がよりよい自分の在り方を考えていくことができるよう、思いを巡らせていく時間がもてるとよい。
(『道徳と特別活動』2024年4月号)




