【児童の実態把握】組織的な実態把握と道徳科授業の指導の工夫

―児童に合わせた授業を―

埼玉県幸手市立上高野小学校 主幹教諭

藤原 祐介
授業実践 第二学年

学級の児童の実態把握

 新たな学級を担任する際、児童の実態について前担任や前学年主任から引き継ぎを受けることは一般的であろう。しかし、前担任、前学年主任ともに異動してしまうことも珍しくない。また、前担任だけでなく、多くの教職員や関係者が関わりながら支援をしてきた児童がいることも少なくないであろう。
 そこで、四月当初に昨年度の児童の状況を引き継ぐ時間を学校全体で設定することが望ましい。特に、前担任が異動していたり、多くの目で支援してきた特別な配慮を必要とする児童がいたりする場合は、その関係者が集まり、組織的に引き継ぎを行うべきである。例えば、特別支援教育コーディネータ―や養護教諭、教育相談主任、場合によっては管理職も交えながら引き継ぎを行うことが考えられる。学級経営をする上で、四月当初に新学級担任がその児童の実態に合わない関わり方をしてしまうと、その児童との信頼関係の構築が極めて難しくなり、それが一年間尾を引いてしまうことにもなりかねない。また、本人だけでなく保護者の気持ちや考えを理解し信頼関係を築いていくことも、よりよい支援をしていくための鍵となる。前年度までの個別の教育支援計画や児童に関する記録等を複数の目で確認し、児童の特性を改めて確認・検討する。そして、多角的な視点から、学級担任がその児童に合った関わり方や支援を一学期当初から行えるようにするとともに、保護者との連携、スクールカウンセラーや関係機関等との連携について話し合うことが大切である。
 このように、特別な配慮を必要とする児童が存在する場合は、前担任と新担任間だけでなく、その児童に関わる教職員間で組織的に記録を基にその児童の実態を把握し、支援方法を検討していくことが重要である。

道徳科授業での支援

主題名

自然や音楽のもつ力 D[感動、畏敬の念]

ねらい

自然や音楽に元気付けられる登場人物に自我関与することを通して、自然や音楽などが与えてくれる力や美しさを感じ取り、素直な感動を大切にしようとする心情を育てる。

教材名 「ころきちのバイオリン」(出典『新・みんなのどうとく2』学研教育みらい)

●指導の工夫
 D[感動、畏敬の念]を主題とした授業は、「美しいもの、清らかなもの、気高いものに接したときの素直な感動を大切にする」心を育てることをねらいとすることから、他の内容項目での授業よりも見えない心の内面について深めていく学習場面が多くなる傾向にある。そこで、前述のような実態の児童が複数いることを踏まえ、「見えないものを可視化する」視点を大切にし、次のような指導の工夫を行った。

●教材提示の工夫…場面の情景を再現した掲示物を貼った黒板上で、ペープサートを動かしながら教材提示を視覚的に行った。
●「気持ちの変化」の視覚化…「表情絵」を用意し、「気持ち」やその変化を「表情」で選べるようにした。
●「自己を見つめる場面」での振り返りの視点の具体化…「自然に触れて感動しことはあるか」「音楽に触れて感動したことはあるか」など、具体的な視点を基に自己を振り返ることができるようにした。
●ワークシートの工夫(資料)…それぞれの発問で、表情絵を選ぶことでそのときの気持ちやその変化を考えられるようにした。また、振り返りは表情絵に「〇」を付ける形にし、振り返りやすくした。さらに、振り返りを文章で表現できる児童のために、左下に記述欄も設けた。
●集中力を持続できるようにするための工夫…適宜児童の名前を呼んで問い掛け、傍に行き選んだ表情絵を確認したり、選んだ理由を聞き取り考えを認めたりするなど、本時の学習に集中し続けられるようにする。

資料 実際のワークシート

まとめ

 児童の実態を複数の目で確認・検討し、その児童に合った指導方法を考えていく。「必ず発言しなければならない」「全員が振り返りを書かなければならない」のではなく、その児童が言葉で表現するのが苦手であれば、例えば、「選ぶ」ことを通して考えられる手立てを準備する。もちろん、自分の言葉で表現できる児童には言葉で表現しながら話し合い、思考を深めていく場面や記述欄を確保していく。授業に児童を合わせるのではなく、それぞれの児童に授業を合わせていく視点を大切にしながら、道徳科授業を構想していくことが大切である。

(『道徳と特別活動』2024年4月号)