【下学年】一人一枚のホワイトボードを活用し,意見を広げ,共有する工夫

東京都立川市立第二小学校 主任教諭

安西 優也
授業実践 第二学年

 一人一人の多様な考えを共有していくことで、考えに広がりや深まりが見られる。そして、より一層ねらいに迫ることができると考える。考えを広げる方法にはたくさんの方法があるが、今回は、「一人一枚のミニホワイトボード」「考えの尋ね歩き」「全体での意見の取り上げ方」を紹介する。

授業実践 第二学年

主題名

あいさつパワー B[礼儀]

ねらい

挨拶の心地よさや意義に気付き、挨拶をしていこうとする態度を養う。

教材名 あいさつが きらいな 王さま(出典:「小学 どうとく ゆたかなこころ 2年」光文書院)

①ねらいとする道徳的価値について
『小学校学習指導要領解説特別の教科道徳編』のB[礼儀]の低学年の指導の要点には、「はきはきとした気持ちのよい挨拶や言葉遣い、話の聞き方や食事の所作などの具体的なふるまい方を身に付けることを通して明るく接することのできる児童を育てることが大切である」と示されている。本時では、特に挨拶の心地よさ、そして意義について気付かせていきたい。

②児童の実態について
 挨拶については学校生活の中で度々指導されている。友達同士や学級担任には、挨拶を進んでできる児童が多いが、もっと色々な人に挨拶ができるようにしたい。そこで、挨拶の意義や心地よさなどを改めて気付かせたいと考えた。

③教材について
 挨拶が嫌いな王様は挨拶をした者を牢屋に入れてしまうきまりをつくる。王様が町に出てみると、町には誰もいない寂しい状況だった。王様は城に帰り、捕まえた者に「なぜ挨拶が好きなのか」を聞き、みんなを牢屋から出したという話である。登場人物の心情を通して「なぜ挨拶が好きなのか」を考えることで、児童一人一人がもっている挨拶の心地よさや意義が引き出せると考えた。

 まず、一人一人の考えを引き出すために自分の考えをホワイトボードに書く時間をとる。ホワイトボードはノートやワークシートに書くよりも書くことが苦手な児童にとって抵抗感が少ない。また、多様な考えを吹き出しや絵でも表現できるので表現の自由度が高い。その後、ホワイトボードを持った状態でできるだけ多くの人と意見を交流する「尋ね歩き」を行った。ペアや班などで意見を共有することも可能であるが、「誰とでも学び合うことができる」「自分のペースによって人数が調整できる」「自分の考えと同じか違うか考えながら、似ている人を見付けることができる」といった点で、本時では「尋ね歩き」としている。また、学級経営の一環として、道徳の時間のみならず算数や国語など他教科でも男女関係なく誰とでも学び合えること、一人でいる子に声を掛けられること、すぐにペアを組めることを意識して指導している。
 全体での意見交流を行う際には、児童同士で相互指名を行っている。似ている考えをハンドサインで表して、つなげて発言できるようにすることで、板書で整理しやすくなり、意見の共有がしやすくなる。

●授業記録(中心発問)
 中心発問での意見共有の場面では、まずホワイトボードに自分の意見を書いた後、自由に尋ね歩きをする時間を設けた(資料1)。児童同士でも交流をしているが、教師も一緒に相槌を打ちながら意見を認めていくことで、より一層、意見の共有が促されていく。

資料1 尋ね歩きの際に児童が書いたホワイトボード

 友達との交流で、自分の意見として「挨拶をすればみんなよい気持ちになるんだよ」と書いた児童が「挨拶をするのは当然」という意見を書き加えており、考えが広がっていることが分かる。また、「挨拶をすると気持ちがよい」と書いていた児童は、「挨拶をしたらすっきりする」と書き加えている。このように自分の考えを相手に伝え、共有しながら意見を広げていることが分かる。
 全体での意見交流時には、似ている意見はハンドサインでチョキを出すというルールにしている。また、相互指名で似ている人を中心に指名させるようにしている。意見に詰まったり、全体で思考を深めたりしたい場合は教師がいったん止めて全体に投げ掛けるようにしている。

C1 「挨拶をするとみんなよい気持ちになるんだよ」と言ったと思います。
T C1さんの意見と似ている意見の人がいたらチョキを挙げましょう。
C2 ちょっと似てる。
C3 似てる。
C4 似ているか分からない。ちょっとだけ似ているかも。
C1 C2さん、どうぞ。
C2 挨拶をすると、みんながよい気持ちになる。挨拶をしないと気分が悪くなる。

 教師は児童の意見を整理しながら板書し、「悲しい感じの意見は何色だと思いますか」と尋ねながら、「赤、黄色、青」と児童と共に色を決め、意見をイメージごとに色でくくった。例えば「挨拶をしないと悲しいような気持ちになる」という意見は青でくくるなどして、児童に分かりやすく示している。そこで、みんなの意見で出された価値理解を共有し、展開後段の振り返りへとつなげていく。

T 「挨拶をしないと悲しい気持ち」という意見は何色でくくりますか。
C 青。
T では今日は青にしましょう。「暗い」「誰も出てこない」「感謝もできない」「悲しい」「元気が出ない」「寂しい」という意見が青になりましたね。では、挨拶をするとよい理由は何色でくくりますか。
C 黄色。
T みんなの意見を青と黄色で囲ってみました。挨拶をしないと青い意見のように悲しい気持ちになってしまって、挨拶すると黄色のようなよい気持ちになるのですね。みんなにもそういうことはありますか。

 中心発問で「挨拶をするとよい気持ちで、しないと気分が悪くなる」というような意見が多く出てきたという意見共有をし、価値理解を深めたことによって展開後段の児童の記述に次のような深まりが見られた。

・「ありがとう」と言ったら、返してくれた。「ありがとう」とママに言ったら、ママが「どういたしまして」と返してくれました。そのときはいい気持ちになって、「今日も頑張れるぞ」って思いました。これからも挨拶をいっぱいしようと思いました。
・挨拶をしている人が捕まるなんておかしい。小さいころからいろいろな挨拶をしてきたけれど、その中で一番うれしかったのは、シルバーさん(地域の見守りをしてくださる高齢者の方)に「さようなら」と言ったら「気を付けてね、さようなら」と言ってもらえたときです。これからもみんなに挨拶をして、みんなをにっこりさせたいです。

資料2 本時の板書